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ノート 1945年~1959年 戦後の日本
  / Post-war Japan - before 1959

 戦後1945年から59年までは、まだ自分は生まれていないので当然記憶にない。だが60年以降になっても、終戦直後の名残はいくつもあった。『懐かしのメロディ(懐メロ)』と呼ばれるジャンルのテレビ番組が大流行でリンゴの唄や青い山脈が初期の歌謡曲が流れていた。では洋楽はどうだったのか。戦前『敵性音楽』として規制されていたものが一気に街にあふれ出して、ジャズ、ハワイアン、カントリーウエスタンと言ったそれぞれのジャンルで活躍するミュージシャン達が現れた。

アンドレ・コストラ ネッツ楽団 ビギン・ザ・ビギン
André Kostelanetz - Begin The Beguine

 1945年12月、日本コロムビア(日蓄工業)は,アンドレ・コストラネッツ楽団の「ビギン・ザ・ビギン」と「眼に入った煙」(煙が眼にしみる)のカップリング盤から戦後、販売再開されたそうだ。これらの原盤はすべて戦前にアメリカ・コロムビアから支給されていたものだった。
 多くのアーティストにカヴァーされたジャズの名曲。「ビギン・ザ・ビギン」を「最初から始めよう」と言う意味だと思っていたら、"The Beguine"というのはダンス音楽の一つらしい。


ビング・クロスビー イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム
Bing Crosby And Les Paul Trio - It's Been A Long, Long Time 1945

 だが当時、厳しい物不足で戦火の跡が残る日本では、学校や放送局等の公共施設以外で、レコードを聴く余裕があるのは、一部の限られた人達だったろう。一般にはラジオを通じて音楽は普及していった。
 そんな中、1945年9月に進駐軍放送(AFRS)が開始される。もともと米国軍人向けの放送だが、一般の日本人も聞いていたようだ。流行りのポップスだけではなく、クラシックの名曲等も放送されていた。ただ残念なことにAFRSの詳しい放送内容がわからない。
 終戦後の1945年にヒットした曲。多くのアーティストにカヴァーされて、ポピュラー音楽のスタンダード曲となった。歌っているビング・クロスビーは著名な歌手・俳優だが、進駐軍放送でも週一回のレギュラー番組を持っていたそうだ。当時の放送でも流されていたと思う。
 2019年の映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも、ラストシーンの挿入曲として流れていた。


グレン・ミラー楽団 茶色の小瓶
Glenn Miller Orchestra directed by Wil Salden - Little Brown Jug

 ジャズは、いくつものジャンルに分かれていくが、この曲は『スウィング』と呼ばれる、明るく軽快な聴いて判り易いジャズのスタイルの一つだ。ビッグバンドで演奏されるダンスミュージックには、「ムーンライト・セレナーデ、イン・ザ・ムード、真珠の首飾り」等、今でもブラスバンドの演奏会で演奏されることも多い。ベニー・グッドマン楽団の「シング・シング・シング」も有名だ。グレン・ミラー自身は終戦前の1944年に飛行機事故で亡くなっている。


サラ・ヴォーン バードランドの子守歌
Sarah Vaughan - Lullaby of Birdland 1954

 1952年、盲目のジャズ・ピアニスト、ジョージ・シアリングが作曲したスタンダードナンバー。ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、そしてこのサラ・ヴォーンと当時人気だったジャズシンガーがいるが、低音でハスキーな彼女の歌が一番好きだ。白黒写真で紹介されることが多いのでものすごく昔の人に感じるが、1924年生れなので、越路吹雪や高峰秀子と同年だから、そんなに古い話ではない。いや、やっぱり古い話かな・・・


プラターズ オンリー・ユー
The Platters - Only You - Lyrics 1955

 1955年に発売され、ミリオンセラーとなった名曲。オリジナルのメンバーは既に亡くなったが、新しいメンバーで現在も活動するコーラスグループ。


ルイ・アームストロング
Louis Armstrong - Nobody Knows the Trouble I've Seen

「サッチモ」の愛称で知られたルイ・アームストロング。バラ色の人生、ハロードリー、この素晴らしき世界等、数多くのヒットを飛ばした。この曲は、神に召される寸前の黒人が、辛かった人生を振り返りながらも、それを知っていてくれた神を讃える黒人霊歌だ。


デイブ・ブルーベック・カルテット テイク・ファイブ
Dave Brubeck - Take Five 1959

 ピアノを弾いているのがデイブ・ブルーベックで、サックスはポール・デスモンド。お気に入りの曲だが、テイク5の5は何を意味しているのか、よくわからなかった。5時に集合するのか、演奏料が5ドルなのか……
 で、調べてみると、これはリズムの事らしい。この曲は4分の5拍子になっている。ピアノの伴奏を聞くと確かに5拍で合う、そうだったのか。
 ところでこの演奏、多分テンポが普通より早い気がする。そのせいかどうか分からないが、サックスが途中で息が続かなくなってメロディが切れる箇所がある。一発撮りの生録音ぽくて面白い。


ライフルと愛馬(映画『リオ・ブラボー』挿入歌)
RIO BRAVO My Rifle, My Pony, and Me/Cindy - Dean Martin, Ricky Nelson and Walter Brennan (legendado) 1959

 この時代、ジャズだけが流行っていたわけじゃない。折角なので西部劇から一つ。寝ながら歌っているのが、ディーン・マーティンで、ギターを弾いているのがリッキー・ネルソン。後ろで笑う大男がジョン・ウェインで、ハーモニカのお爺さんは……よく知らない。数ある西部劇で何でこれを選ぶんだと言われれば正直困るが、今の基準で言えば、リアリティのなさそうなこういうシーンが自分は結構好きなのだ。
 「皆殺しの唄」を悪党どもが歌う中、捕まえた殺人犯を取り戻しに、明日は襲撃されるかもしれないといった保安官室の一室で、保安官のウェインを助けようとする仲間たちが、歌を通して心を一つにする名場面なのだ。




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