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ノート  1960年~1964年 ラジオからテレビへ  / From Radio to TV


オードリー・ヘップバーン ムーン・リバー
Audrey Hepburn - Moon River 1961

 この曲は、ヘップバーン32歳の頃の作品「ティファニーで朝食を」のテーマ音楽。ページのタイトルに反して、いきなり映画の動画を紹介するのは、ヘップバーン自身が歌っているシーンがとても魅力的だったからだ。作曲はヘンリー・マンシーニで、オーケストラによるインストルメンタル演奏が普通だった。
 ニューヨークのとあるアパートを舞台にした物語だが、いわくありげな人物が沢山出てくる。ヒロインのヘップバーン自身、高級娼婦の設定で、相手役のジョージ・ペパードは、金持ちのマダムをパトロンに持つ売れない作家だ。どこかで見たことがあると思ったら、『特攻野郎Aチーム』のハンニバル大佐だった。配役と俳優のキャラが一致しない映画に見えるが、実際に原作者のトルーマン・カポーティは、主役をマリリン・モンローにするつもりだったらしい。
 もう一人、面白い人物がいる。ミッキー・ルーニーが演じる”ユニヨシ”と言う日系アメリカ人で、口うるさいがヒロインのホーリーには優しい隣人として登場している。自分などは笑って見ていたが、日本人をチビで出っ歯と決めつける悪意ある表現だと俳優生命を脅かされるほど批判されたらしい。当時は、人種差別問題から公民権運動が盛んになっていた頃で、キング牧師やマルコムXと言った今や伝説となっている人たちが、現実に生きていて、人種差別解消に奔走していた時代だった。


トーケンズ ライオンは寝ている
The Tokens - The Lion Sleeps Tonight 1961

 この曲は1939年に南アフリカのミュージシャン、ソロモン・リンダが作詞・作曲した「Mbube(ライオン)」が原曲。トーケンズが1961年にカバーしたこの曲は、全米シングルチャートで1位を記録した。


カスケーズ 悲しき雨音
The CASCADES - Rhythm Of the Rain

 雨音を聞きながら去っていった彼女の事を思い出すと言った切ない失恋ソングで、1962年にリリースされ世界的ヒットとなった。息の長い曲で、長年に渡り色んな番組やCMの挿入曲として流れていたと思う。
 テレビは、アメリカで1950年代、日本で1960年代に普及を始めた。特に58年の明仁皇太子のご成婚、64年の東京オリンピックが普及に拍車をかけたそうだ。実家の白黒テレビはいつ頃、購入されたか記憶が曖昧だ。自分が物心がついた頃からあったように思う。丸いブラウン管とガチャガチャと手で回すチャンネルが懐かしい。


ローハイド
Rawhide Opening Theme 1959-1965

 テレビ番組の最初の記憶にあるのは『月光仮面』と、この『ローハイド』だ。まだ幼くて、ドラマの内容はまるで理解していなかったが、『ローレン、ローレン、ローレン、ローハーイド』とよく歌っていた。この作品には、若き日のクリント・イーストウッドがレギュラー出演していた。当時、西部劇はテレビ番組に欠かせないものだった。スティーブ・マックィーン主演の「拳銃無宿」や「ララミー牧場」と言った作品がいくつも放映されていた。子供の頃、不思議の思っていたのは食事のシーンで、あれだけ牛が沢山いるのに、登場人物たちは、小さな小屋で豆のスープばかり飲んでいた。あれでお腹が空かないのかといつも心配していた。
 テレビ番組としては「スーパーマン」や「ターザン」もよく見ていたが、『弾よりも早く、機関車よりも力は強く』のセリフや、ターザンの叫び声はよく覚えているが、音楽はほとんど記憶に残っていないので割愛した。


ポール・アンカ 史上最大の作戦
Paul Anka - The Longest Day 1962

 この頃は戦争映画や西部劇がテレビで流れることがとても多かった。この映画は、第二次大戦のノルマンディー上陸作戦を描いた戦争巨編。ジョン・ウェイン、ヘンリー・フォンダはじめスター揃いの超大作だ。既にカラー作品が結構あった時代なのに何故かモノクロ作品。原題は『The Longest Day』で、半藤一利のノンフィクションで終戦前の御前会議を扱った『日本のいちばん長い日』とほぼ同じ。半村の原作は3年後の1965年が初版なので、たぶん『The Longest Day』を意識してタイトルをつけたものと思われる。数百人に及ぶ兵士のインタビューを元に戦場を描いたコーネリアス・ライアンと、皇居で国の最高権力者達の姿を描いた半藤の作品を比べると、何に重きをおくのか、どの日を一番長く感じたのか、どっちが良いか悪いかではなく、作家達の国民性を表すようで面白い。
 曲を歌っているのは「ダイアナ」や「マイウェイ」でお馴染みのポール・アンカ。自身で作詞・作曲をし映画にも出演している。但し、この映画がテレビで放送されるのは10年後の1972年になる。音楽は映画の公開と同時にラジオやテレビで流れていた。特にミッチミラー合唱団の演奏はよく聞かれた。


コンバット
"Combat! Opening Theme - All 5 Seasons 1962 - 1967

 ノルマンディ上陸作戦以後のアメリカ軍の戦いを描いた戦争ドラマだ。テーマ曲は全国的に流行して、野球の応援歌になっている。オープニングでは、ヘンリー少尉がトップだが、ドラマの中心はほぼ、寡黙で沈着冷静なサンダース軍曹だった。短気だが銃の腕が良いカービー、フランス語が得意なケーリー、大柄だが気が優しいリトルジョン、あちこちから呼びつけられて、銃もないのに戦場を走り回る衛生兵のカーター等、個性豊かな共演者がいた。
 登場人物のキャラクターをしっかり立てて、その回のテーマに応じた配役と演出をするといったドラマの構成は、後の「スタートレック」シリーズ等にも通じる手法だ。
 例えば、ドイツ軍が占領するある丘を奪取せよと命令があったとする。その丘の麓には一軒の農家があって、そこを米軍が攻撃の拠点に選ぶ設定だとしよう。戦闘中心に描くなら冷徹無比なサンダース軍曹をメインに据える。もし農家に若いフランス娘がいれば、ケーリーを主人公にして儚いラブストーリーを展開するとか、もし小さな子供が住んでいれば、リトルジョンを主人公にして、その子が大事にしているぬいぐるみを戦車が踏みつけるられるのから守る話にするといった具合だ。この作品が、人間ドラマだと言われるのはその辺のせいだろう。
 子供の頃の作品なので具体的なストーリーはほとんど覚えていないが、サンダース軍曹がたった一人でドイツ軍の戦車に挑んで、あの手この手で勝利する回だけは記憶に残っている。後年のスタローンやシュワルツェネッガーが演じるヒーロー像の原型があるように思う。

 と書いたところで、YOUTUBEでその回を見つけた。ご興味のある方はどうぞ

 コンバット 「戦車対歩兵」(原題:Duel 決闘)YOUTUBE



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