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ノート 2010年~2014年 格差社会


 格差社会と呼ばれて久しい。80年代アメリカやイギリスから始まり、日本でも90年代から叫ばれるようになり、ニュアンスは異なるが『勝ち組、負け組』という言い方もあった。『格差』は人が社会を形成するようになった太古からずっと存在している。貴族と平民、平民と奴隷、帝国と植民地、戦勝国と敗戦国など。その違いが長く固定化されると問題が大きくなっていき、激動の時代を迎える。皮肉な話だが、格差が解消されるのは、大抵は戦争や革命など大きな混乱を経た後だ。それもわずか数十年の平穏な時期が過ぎて、再び冨や権力を集中しようと動く人間たちがいる。数行で語るにはあまりに大きすぎるテーマだが、21世紀が始まり、新たな制度や価値観が求められているのは確かだと思う。

 歌の世界で言えば、むしろ夢のような男女の恋愛自体を不要なものと見做して、個々の人間がどう生きるかを問う作品が増えたように思う。


シャッキーラ Waka Waka
Shakira - Waka Waka (This Time for Africa) (The Official 2010 FIFA World Cup™ Song)

FIFAサッカーワールドカップ 南アフリカ大会テーマ曲 歌っているのはコロンビア出身の歌手シャキーラ。日本の放送ではNHKがSuperflyの『タマシイレボリューション 』を採用したため、そちらの曲が有名で、この曲はあまり知られていない気がする。前回ドイツ大会のイタリア対フランスのPKシーンから始まる挿入画像は、メッシやクリスティアーノ・ロナウドはじめ、ペレやマラドーナといった往年の名選手達の映像もインサートされていてサッカーファンには結構うれしい。ちなみにシャキーラは、南アフリカ大会に優勝したスペイン代表のジェラール・ピケ選手と結婚している。10歳年上の姉さん女房だ。


レディ ガガ
Lady Gaga - Bad Romance

この曲のリリースは2009年だが、彼女の曲が日本で流行りだしたのは少し後なので、2010年代に加えさせてもらった。映像も音楽もショッキングだが、70年代のシュールな感覚を彷彿させて不思議に懐かしさを感じる。GAGA自身子供の頃に、ヴォーグ等のファッション雑誌を通じて、ギイ・ブルダン等の前衛的な写真に見入っていたのではないか。  時代を反映していると感じるのは、PVラストで、愛が欲しいと連呼しながら相手の男を燃やし尽くしてしまうシーンで、本当は男など当てにしていないこと端的に示しているように思える。これは後のディズニーの『アナと雪の女王』にもつながる話で、男女間のロマンスが戦後崇拝されてきたような形では成立しないようになってしまったとしか思えないのだ。


アナと雪の女王
Idina Menzel - Let It Go (from Frozen) 2013

 この曲は大ヒットしたディスニ―映画『アナと雪の女王』のテーマ曲。今のディズニーには『シンデレラ』や『眠れる森の美女』の頃に夢見たような王子さまは存在せず、家族や仲間への愛や友情で世界を救おうとする。ちょっと企画側の意図が感じられるが、それも時代の意識を反映した結果だと思いたい。前作『マレフィセント』からその傾向がある。


ケイティ・ペリー
Katy Perry - Roar 2013

2013年に発売されたアルバム『プリズム』の収録曲。この曲でケイティ・ペリーは、YouTubeの再生回数で、初めて10億回を達成したアーティストになった。動画では恋人がいきなりトラに食べられるが、実生活ではロード・オブ・ザ・リングのレゴラス役のオーランド・ブルームと2019年に婚約し、妊娠を発表した。


テイラー・スウィフト
Taylor Swift - Shake It Off 2014

この曲はテイラー・スウィフトの32枚目のシングル。アメリカでチャート1位を獲得した。Shake It Off とは、『気にしない』と言う意味らしい。当時、テイラーが受けていた批判に対する答えだったそうだ。


カーラ・ボノフ
Karla Bonoff - The Water Is Wide

 原曲はスコットランドの民謡で、CMやNHKの朝ドラ『花子とアン』『マッサン』で挿入歌として歌われた。哀愁漂う曲調は21世紀の今も愛され続けている。 
 歌っているカーラ・ボノフは、アメリカ西海岸を代表するシンガーソングライター。
 古典であるこの作品は、歌詞を見ると、
『目の間に広がる大河を、私と彼は渡ることが出来ない。どうぞ漕ぎ出す船をくださいな。』
 と恋の成就を願うが、2番には、
『今の彼は優しくて素晴らしいけれど、やがて老いて朝露のように消えてゆく。このまま沖へ進んでも沈むのか泳ぐのかどうなるのかわからない』
 と言うような内容で終わっている。恋愛には過度な期待をしないようにと昔からの教えなのだろうか。



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