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■カワセミの見つけ方

 時々、川や池などでどうやってカワセミを探すのかと質問を受けることがある。
今回は、見知らぬ場所での探索方法をまとめてみた。あくまで自己流なのでご参考までに。
 実はもっと簡単で確実な方法、『知っている人に聞く』、『撮影中のカメラマンを探す』と言う手もあるのだが、これは面白くない。
 それなりに知識と情報があれば、鳥を探す事自体が一つのゲームとなって、自分の耳と目で見つけることが快感に繋がる。

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まずは基本中の基本、『耳で聞いて、目で探す』。

●耳で聞く
 最初に注意するのが『耳』だ。視力の場合は、一定の限られた方向に注意を集中するが、耳は360度、同時に全方向を捉えることが出来る。この違いは大きい。全てを音だけで判断はできないが、鳥の存在と、居場所の見当を付けることが出来る。
 では、何を聞くか?
 大抵の野鳥は声を出す。
『雉も鳴かずば撃たれまい』のことわざは、『余計な一言が、災いを招く』と言う意味だが、これは人間側の勝手な見方で、鳥にすれば、求愛、威嚇、警戒等必要があるから鳴くわけで、人間の都合に関係なく、鳴く時は鳴く。
 カワセミの鳴き声に関する個人的見解は次の通り。
(学術的根拠はなく、あくまで哲太郎の主観なので、違っていても悪しからず)

 大雑把にまとめると鳴き方には以下の5種類がある。普段耳にするのは1と2で、3~5は限定的に使われる。(カッコ内は擬人的意味合い等の補足)

1.『チィー』 
強い呼掛け、餌を獲って移動した直後、または威嚇、または驚いた場合、または場所を移動する場合
(おい、こら、わあー、と言った感じだが、一番聞くことが多く、音の強弱で意味合いを変えているようだ。自転車のブレーキ音と聞き間違える時がある)
飛行中、または留まる直前に発せられることが多い。

2.『ツッピー』
親愛の情がある呼び掛け、自己アピール、または異性を探す場合
(やあ、僕はここにいるよ! 君は何処に居るんだといった感じ。『ツピーツピツピツッピー』と言ったように連続して鳴く事もある)
こちらは飛行中だけでなく、枝などに止まってからも発せられる。

3.『リリリリ……』 
縄張り争いの警戒、戦闘準備をする場合
(但しカワセミに対してだけで、他の鳥にはしない。鈴虫の声に似て綺麗だが、もっと大きな鳴き声。バトル寸前に発するようなので、普段は聞けない)
敵対するカワセミが近くにいる場合で、どこかに留まっている時に発せられることが多い。

4.『ジッ、ジッ、ジッ』
求愛時の呼掛け、同時に羽を小さく振るわせる事も多い。
(アナタどこ?早く来て!と言った感じ。求愛の時期にしか聞かないので、多分そうだと思うが……)
メスが番(つがい)となったオスに対して発することが多い。

5.『ツェツェ、ツェツェ』 
親への呼掛けをするとき
(茂みに隠れているヒナ鳥が、親に居場所を知らせる場合など)
主に親の給餌を期待して発せられると思われる。

 カワセミは、この鳴き声の組み合わせで、鳥同士のコミュニケーションを図っているように思う。
 ちなみに野鳥の鳴き声を『さえずり』と『地鳴き』の二つに分ける事がある。『さえずり』は求愛や縄張りの主張、『地鳴き』は仲間との情報伝達とか言われたりする。
 元々、英語の『song』と『call』の和訳らしいが、カワセミの鳴き声に当てはめるのは難しい気がしている。
 『ツッピー、ツピ、ツピ、ツッピー』とか連続して鳴くと『さえずり』っぽく聞こえなくもないが、意味的には『地鳴き』に近いように思える。逆に音的には『リリリリ……』の戦闘音が一番『さえずり』っぽいが、深刻な戦闘状態を『song』と呼ぶには気が引ける。何れにせよ、カワセミの鳴き声で居場所が知れることが最も多いので、『まずは耳を澄ますべし』と思っている。


●眼で探す
  実は、眼だけでカワセミを探すのは結構難しい。
と言っても、カワセミの鳴き声を聞いて、大体この辺に居そうと分かれば、最後は目で探す事になる。
 ただその範囲が広すぎると、やはり探すのが辛くなる。
カワセミ撮影を始めた頃、鴨川を歩き回っても、中々見つけられなかった。理由は、カワセミが好んで留まる場所を理解せず、闇雲に探し回っていたからだ。だから眼で探す場合は、まずはカワセミが好んで居そうな場所を知っておく必要がある。

 ではどんな所にカワセミは居るのか?
 カワセミが居そうな場所を並べるとこんな感じかなと考えている。

 ①静かな池や沼、川の場合はあまり流れが速くなくて、あまり深くない所
 ②岸辺に餌獲りに使えそうな、水面が見渡せる高い枝や建造物がある所
 ③休憩に身を隠せるような茂みや建造物がある所
 ④サギやカメが居る所
 ⑤カワセミが留まりそうな石や枝に、白い糞の跡がある所

 まず①だが、カワセミは勢いよく水中へ飛び込むが、何メートルも潜るわけではない。せいぜい数十センチだ。だから、水面近くに小魚が泳いでいるような浅瀬が好みだ。また流れが速いと自分も流されるためか、好きではないようだ。

 ②は、1m~5mほどの高さがあって、水中の様子がよく分かる所から、カワセミは魚を狙うためだ。

 次に③は、カワセミが安心して休憩出来る場所があるかどうかだ。
 カワセミに限らず、小動物を狙う生き物は沢山居る。ハヤブサなどの猛禽類だけでなく、ネコ、イタチ、ヘビなどの天敵から身を隠す必要がある。カワセミは餌を獲った後、目立たない場所で、1時間程度、食べた餌を消化する間に休憩する。別に茂みや樹木と言った自然物でなくても、橋脚などの人工物でも良い。

 そして④は、カワセミの餌があるかどうかを知るための指標だ。
 サギは比較的大きな魚を食べ、カメ(イシガメ、クサガメ、ミドリガメなど)は雑食性で、貝や水草、小生物など色々食べる。カワセミが普段食べるのは小魚か小エビだが、サギやカメが居るところは、カワセミの餌もあると考えていい。それとサギが水の中にいると言うことは、足が届く程度の水深だとも言える。

 最後に⑤だが、カワセミは魚を捕る前に、大抵、糞をする。そのため、石や枝に、白く伸びた糞の跡が残ることが多い。但し、他の鳥も糞の痕を残すので、区別は難しいかもしれない。

 ではここでクイズです。さて、どこにカワセミがいるでしょうか?
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いかがでしょうか? すぐわかりましたでしょうか。

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カワセミがいるのはAの細い枝の処ですが、
では、この写真を次の3つのブロックに分けた場合。
 A 高い位置の枝
 B 低い位置の枝
 C 暗い茂みの奥
一番長い時間を費やす、休憩の時は、カワセミは何処にいるでしょうか?

答えは、安全で静かな所が多いので、『C 暗い茂みの奥』になります。

 休憩の場合は、『C 暗い茂みの奥』になる場合が多い。理由は先に書いたように外敵に狙われず、ゆっくり休める場所だからだ。子育てやバトルがなければ、カワセミは8割がたこう言う目立たないところに居る。だから見つかりにくい。

 次に餌を捕るときは、何処に留まるか?
魚を獲る時は、この場所だと、AかBになるはずだ。高さがあるので、普通はAの方を選ぶはずだが、下の水中の魚の状態もよって変わる。もし魚が見えなければ、ホバリングをする事もある。
 あとは、カワセミの形(シルエット)をよく覚えておけば、段々とカワセミが見つけられるようになってくるはずですよ。

(哲 『京都カワセミクラブblog』 2021/03/14,15 より転載)


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